BOOK CLUB 海

千葉県発足の読書会です。現在はオンラインを中心に緩く~バラエティに~やっております。

【第二回】ブクラゴ読書会 レポート

思い切って実験的にファミレスで開催した初回とは変わって、いよいよ本式にカフェ&バーレストランでの開催となりました。合計7名での開催となり、バラエティに本をご紹介いただきました!そして、今回は「みんなのニガテ」について考える、言及するというブクラゴ読書会発足時の願いにほんの少し触れた時間で…下に楽しくレポートさせていただきます。

 

■2020年1月26日(日)

参加者様: 6名(男性2名,女性4名)

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本の紹介

「スロウ・ハイツの神様」 辻村深月

人気脚本家がオーナーを務めるアパートに集うのはクリエイターの卵たち。ある日そこに新住人がやってきて、一通の郵便が届く。そこからミステリーが始まります。

登場人物のキャラクター描写が豊富で、複線を巧みに張り巡らせて、下巻で一気に回収する!という気持ちの良いお話で、キャラクターの魅力や温かさを感じ取れるところが推しポイントとのこと…夢中で読んでしまいそうですね!

 

ナ・バ・テア森博嗣

Non but air- 空しかない、彼等には空を飛ぶしかない!というストーリーに沿ったお名前がつけられた本。戦争は日常で人々の手段ではなく最早目的になっている世界で、飛行機・空を飛ぶことは子供たちの至上の憧れ。戦争をテーマにせずに人間にフォーカスを当てているところに個性が光っていて素敵な物語とのことでした。余談ながら、紀元前2世紀にキャラバン貿易で栄えた国が遥か中東にあったそう…この物語のスケールに合わせて、作者様はかつて交易栄えた国とあったお名前をつけたのかな、なんて思いましたが、Non but airという言葉が背景にあったのですね。 森博嗣さんの世界観に惹かれてきます。

 

「受けてみた フィンランドの教育」実川真由、実川元子

世界有数の先進国、水平社会として知られる北欧の一国、フィンランドの教育について紹介していただきました。フィンランドの教育では論述が主流で、理系の分野でもエッセイを書かせるとのこと。留年は普通、「〇才までに〇をしているのが普通」といった規格ルートがあまり無い社会なのだそうです。若者たちがギャップイヤーをとって進学や就職前に好きなことをするというのも素敵ですよね。是非良好・勉強に訪れたいですね~。

 

「スワン」 呉勝浩

巨大モールで引き起こされた陰惨な銃殺事件。犯人は自殺し人の心は悲しみに取り残されたまま。実に面白いことに、本書はレヴューの採点が高得点と低得点にはっきりわかれているのだそう!生き残った十代の女性は被害者として世間の同情と注目を集めますが、「犯人に引き金をひく相手を選ばされ」たことを週刊誌にリークされたことからあっという間に世間のバッシング対象になります。死が目前にある極限状態で犯人から共犯関係を脅迫されることの残酷さ。コロンバイン高校での銃殺事件(キスも知らない17歳が銃の撃ち方は知っている)を基にした映画エレファントが作中で度々登場するそうです。一緒に味わい、考えてみたいですね。

 

「より少ない生き方 ものを手放して豊かになる」 ジョシュア・ベッカー

マインドフルネス、ミニマリズムという言葉は昨今非常に注目を浴びており、情報疲れの現代人の注目の的です。著者はそのミニマリズムの潮流を担った牧師であり、アメリカ人とのこと!(知りませんでした)何に自分のリソースを割くか厳選することで、家族等自分の本当の価値観にあった大切なものにエネルギーを、強いては人生を注ぐことができる。とても耳が痛い大切なお話でした。

 

「螢・納屋を焼く」村上春樹

韓国で映画化された名短編とのことで、社会から一枚浮いたような儚いモデルの女性を巡る二人の男性を主人公にお話は進みます。ささやかな収入で暮らす女性と邂逅した村上春樹を投影したと思わしき主人公と、外国人の男性。ある日彼女はアフリカへ消え、友人の外国人男性が帰国します。何をしていたのか尋ねる主人公に彼は「納屋を焼いていたんだ」と答えるーそして二度と彼女は現れないー。

 

実は紹介者様は村上春樹がニガテで、それは何故だろう?と考えて本書を手にとった結果、ご自身の中で理由が分かったとのこと!それは、「焼き捨てられた納屋」は彼の中の女性像の象徴なのではないか?というとても興味深い問いかけでした。本書を未読だった私は、これまでに読んだ村上春樹の著作に「線の細い浮世離れした男の子」と「それを無条件に受け止めて性的関係をもつ女性」が登場したことから、「納屋は主人公の男の子たちが帰れるHomeの意味かと思いました」と言ったのですが、納屋は安易に焼き捨てられるだけの存在として登場するとのこと…少し怖いですよね。

 

普段、ニガテについて触れることって少し躊躇われませんか?

 

けれど私はそういう切込みづらい話題にもみなさんにどんどん触れていただけたら幸せだなぁ、と思っています。何故ならご自身のニガテについて問いかけて理由を真剣に分析する姿勢は、偏見と怒りがつめこまれただけの所謂「ヘイトスピーチ」「disrespect」から最も遠い行為なのではないか?と考えるからです。

 

例えば私がバスケットボールがニガテでも、それはバスケットボール選手を軽蔑することと直結しませんよね。そういう思いなのです。だから今回、思い切ってみなさんにもニガテを聞いてみました。もしかして私の質問にちょっとびっくりして嫌な気持ちになった方もいらっしゃるかも知れません…!兼ね合いは難しいです。思いやりfirstで頑張ります。(笑)

 

 

~主催者の本~

「くらやみの速さはどれくらい」エリザベス・ムーン

幼児期における自閉症の治療が可能になった近未来での最後の「自閉症」。ルーは大企業で働く不思議な中年の男性です。彼の感性は細やかで、時にエキセントリックで、ただうるさい音を聞いて生きているというだけでも膨大な努力を要します。

しかし、彼の務める大企業がある日「成人の自閉症を治す」方法を開発し、彼はその実験台となります。「ノーマル」になった彼の雄弁さが、今はもう消えてしまった自閉症のルーへのあこがれを誘う最後。幸せはなんでしょうか?ルーは、幸せになったのでしょうか?

 

 

 

今回のブクラゴ読書会はそんなちょっぴり突っ込んだ話もできて楽しい紹介をシェアさせていただけた会でした。参加者のみなさま、優しい時間を誠にありがとうございました!